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Paradise And Lunch(4th) [ライ・クーダー(Ry Cooder)]


Paradise And Lunch/Ry Cooder
(邦題『パラダイス・アンド・ランチ』)
(1974)
★★★★

先に言っておくと、僕はこの次に出た『Chicken Skin Music』に満点の★5つをつけることを、すでに決めた状態でこれを書いている。なんだかぐだぐだと思い切り悪く長文を書いているわりには、評価はずいぶんざっくり決めるんだな、と思われるかもしれないが、そんなことはない。これでも★の数を決める際にはさんざん悩んでいるのだ。ここで悩んだのは、★を5つにするか、それとも4つにとどめるかというところ。最終的に4つにしたのは、やっぱどっちが満点かって言えば『Chicken Skin Music』の方だよなあ、という、完全に相対評価による決定である。別に誰も、満点は軽々しく出すなとか連続させちゃダメとかは言ってないのだが。

ライ・クーダー4枚目のこのアルバムは、ライの最高傑作に推す人も多い、というか「名盤ガイド」的なリストではライ・クーダーからはたいていこれが選ばれているという、買って安心、聴いてさらに安心な、超のつく名盤である。作品自体の完成度の高さや音楽的な豊かさはもちろんだが、そうした評価がなされているいちばん大きな理由は、その後のライ・クーダー・サウンドの礎となるものが確立されたアルバムだからだろう。

個人的には、このアルバムの基本的なサウンド・コンセプトはセカンドの『Into The Purple Valley』の延長線上にあると思う(同じように、のちにライが手がける映画音楽などはサードの『Boomer's Story』の系統なのだと思っているのだが)。つまり、アコースティック楽器を中心とした音を、丁寧で創造的なアレンジによってロック的に聴かせ、さらに中南米ミュージックの明るさと叙情を加えたサウンドということなのだが、一方でこういう手法は、ストレートなダイナミックさやスケール感は出しにくいところもある。線が細くなりがちというか、白人的というか。思い切り極端な例で言えば、ブルースではなくカントリーというか。もしかしたらそれはライ自身の資質の問題で、だからライの音楽作りの歩みは「黒っぽさ」をいかに獲得していくかという戦いの歴史だとも言えるのだが、そのいちばん最初の勝利が、この『Paradise And Lunch』なのではないだろうか。要するに、乱暴に言ってしまえば『Into The Purple Valley』にボビー・キングらの黒人コーラスを入れてみたら、これが相性ぴったり、大成功! といった感じだ。

ちなみにその「黒っぽさ」云々は、聴き手である僕自身の資質の問題だったりもする。ソウルでもファンクでもブルースでもそうだが、嫌いとか受け付けないなんてことはまったくなくて、むしろ積極的に聴いているつもりなのだが、それでも最終的にそうした「真っ黒」なものを、どうしても自分が好きな「ロック」のルーツ的なものとしてしか聴けず、嗜好のメインに置くことができないのだ。でもまあ、それは本当に好みの問題なので、このへんで。

サウンド上の特徴やライ・クーダー史上の位置づけがどうこうというのを抜きにしても、このアルバムの音楽的なクオリティーの高さには、それだけで名盤認定したくなるものがある。特に、各楽曲に施されたアレンジの細やかさ、楽しさ、的確さは素晴らしいの一言。何度聴いても飽きないし、むしろ聴き込むほどに新しい発見がある。ちなみにさっきは、「Jesus On The Mainline」のホーン、「Mexican Divorce」のマリンバあたりに深い感銘を受けたところ。なんだかマニアックな聴き方を自慢しているような書き方だけど、本当にそんなことはなくて、そういう一音、一音がガンガン胸に染みてくる作品なのだ、本当に。あ、「本当に」がカブっちゃった。まあいいか。

ちなみにボビー・ウォマックの名曲「It's All Over Now」は先にローリング・ストーンズやフェイセズで聴いて知っていたが、ここでのレゲエっぽいバージョンを聴いて、一発で「こっちの方がいい!」と思ってしまった。夏の日の昼下がりに、缶ビールか何か飲みながら聴いていると、ハッピーなような切ないような、何とも言えない感情に襲われる。そんな名演です。

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