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Islands(8th) [ザ・バンド(The Band)★完]


Islands/The Band
(邦題『アイランド』)
(1977)
★★☆☆☆

ザ・バンド事実上のラスト・アルバム。とはいえ、順序としてはこの収録より前にすでに解散コンサートは行われており、その模様を収めた『The Last Waltz』をすんなり発売するために、契約していたキャピトルからもう一枚オリジナル・アルバムを出す必要があったため、急遽レコーディングされたという経緯があった。まあよくある話だが、そういうケースの例に漏れず、このアルバムもこれまでのザ・バンドの作品と比べると、いかにも投じられた熱量の小さいことがすぐにわかってしまう作品になっている。少なくとも順番としては、ザ・バンドのアルバムの中では聴くのは最後でかまわないだろう。

そうなってくると、問題は「どのくらいひどいのか」ということになるのだが、結論から言うと「箸にも棒にもかからないほどの駄作(★1つ)」と、「それなりの意味はあるし、クオリティーはさておき、音の傾向としては、もしかしたら他のザ・バンドの作品よりこっちの方が好きな人もいるかもしれない(★2つ)」の間といったところではないだろうか。

このアルバムの評価が完全なる最低ランクに落ちてしまうところをかろうじて救っている(?)のは、一応コンセプトらしきものがあることと、そのコンセプトと実際のサウンドが同じ方向を向き、小さいながらもきちんと効果を上げているところだと思う。

タイトルやジャケット・デザインからわかるように、このアルバムのコンセプトは「カリブ」である。自分たちが北のカナダでアメリカン・ミュージックの洗礼を受けたのは反対に、ニューオーリンズから海を越えて中南米へ渡り、発展していった「もうひとつの」アメリカン・ミュージックの流れを追う……というとちょっと言い過ぎかもしれなくて、実際にはっきりとそういう香りを漂わせているのはタイトル曲「Islands」くらいなのだが、しかしこのアルバムのイメージ自体はそう受け取っておいて間違いない。リラックスした南国の気怠いハッピーさのようなものがかすかに感じられる音。そしてそれは、すでに決定的に緊張感を失った解散状態のバンドが醸し出す空気そのものなのだ。

サウンド自体は、そのクリアさといい、クールな感じのシンセサイザーの使い方といい、明らかに前作の『Northern Lights-Southern Cross』の延長線上にある。違っているのは演奏のノリの方で、アレンジが練り込まれていないぶんザ・バンドの持ち味であるスリリングさに欠け、かわりにソフトでイージー・リスニングな心地よさが獲得されている。というのは誉めすぎか。まあぶっちゃけ、ちょっと退屈ぎみな演奏だ。

楽曲も、正直言って印象の薄いものが多い。いかにも時間がない中、急いで作った曲ばかりという感じだ。そんな中で例外的に出色なのが「Christmas Must Be Tonight」と「Georgia Om My Mind」。前者はリック・ダンコがボーカルをとる、淡々としていながら美しいメロディーを持ったクリスマス・ソング。そして後者では、かの名曲をリチャード・マニュエルが切々と歌い上げている。これはもう本当に、文句なしにすばらしい。最も有名なレイ・チャールズのバージョンより上だと思う、マジに。この1曲のみが無性に聴きたくなってレコードを引っ張り出すことが、確実に年に一回はある。そのくらいの好演だ。

それでも、ここで聴けるザ・バンドは、もはやあの、世界にとって最も重要なバンドだったころのザ・バンドではない。もはや別のバンドと考えて聴くべきなのだ。

このあと、ザ・バンドは晴れて(?)『The Last Waltz』を発売、それ以降バンドとしての活動を完全に休止する。

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